【コラム】 筆洗  東京新聞2017年1月5日

百五年前の春に二十六歳の若さで逝った石川啄木は、こう言い残したとされる。「俺が死ぬと、俺の日誌を出版したいなどと言ふ馬鹿な奴が出て来るかも知れない、それは断つてくれ、俺が死んだら日記全部焼いてくれ」

▼実際に焼却しようという動きがあったが、それに立ちはだかったのが、啄木の未完の原稿などを保管していた函館図書館の岡田健蔵だった▼岡田は「職務上の責任感と、啄木が明治文壇に重要な存在である点から絶対にその焼却に反対する」と言い、「死守する覚悟」で守り抜いた。一世紀を経て、私たちが名作『ローマ字日記』を読むことができるのは、岡田のおかげなのだ(ドナルド・キーン著『石川啄木』)

▼そういう「職務上の責任感」を発揮する人物は、いなかったのか。

アフリカの南スーダン国連平和維持活動に参加する陸上自衛隊の部隊が、日報を廃棄していたという。現地で大規模な武力衝突が起きた際のことを記録した文書を消し去っていたのだ

▼廃棄ばかりではない。政府や電力業界の幹部たちが核燃料サイクル事業の今後について話し合った「五者協議会」にいたっては、議事録すら作っていなかったという。大切な会議の記録もなしに、後からどう検証をしようというのか▼問われているのは、記録を作り、守ることへの覚悟と責任感だけではない。未来への覚悟と責任感だろう。

<原発国民負担「過去分」2.4兆円 福島第一処理費倍増21.5兆円>16/12/10東京新聞

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【経済】

原発国民負担「過去分」2.4兆円 福島第一処理費倍増21.5兆円

写真

 経済産業省は九日、自民党の会合や有識者会合などで、福島第一原発廃炉など事故処理にかかる費用が、二〇一三年に試算した十一兆円から二一・五兆円に倍増するとの試算を示した。中でも被災者の損害賠償に充てる費用を捻出するため、「電力消費者は過去に原発の事故に備えた賠償資金を積み立てておくべきだった」として「過去分」の費用二・四兆円程度を原則すべての電力利用者の料金に上乗せする。原発を維持するため、さまざまな形で国民負担が膨らむ。 (吉田通夫)

 原発事故の賠償費用は、東京電力など原発を持つ大手電力会社が、契約者の電気料金に「一般負担金」などを上乗せして負担させる仕組みが事故後の一一年にできた。原発を持たない新電力は負担義務がなく、電気料金にも含まれていない。

 これに対し、経産省は「本来は電力会社が原発事業を始めた(一九六六年)時から、事故に備えて一般負担金を積み立てておくべきだった」として、大手から新電力に移行した消費者も含め「過去分」の負担金を請求する。現在、大手電力会社の契約者が納めている千六百億円の一般負担金の規模を基に、二〇一一年までに積み立てておかなければならなかった「過去分」は二・四兆円と試算した。

 二〇年をめどに大手電力会社の契約者だけでなく、新たに新電力に移った契約者にも、等しく請求し始める方針。経産省は、四十年かけて負担する場合、月に二百五十七キロワット時の電力を使うモデル世帯の負担額は月額十八円だと説明している。

 しかし、賠償費用の総額は七・九兆円に膨らむ見通しで、二・四兆円の追加負担を求めても足りない。残りは引き続き東電と大手電力会社の契約者に求めるため、大手の電力利用者は料金がさらに上がる可能性もある。このほか、廃炉費用は一三年試算の二兆円から八兆円へと四倍になる。東電に利益を上げさせて資金を捻出するが、東電管内の電気料金は他社の管内よりもさらに下がりにくくなる。

 放射線に汚染された土壌などを取り除く「除染」の費用も二・五兆円から四兆円に増加。取り除いた土壌を保管する「中間貯蔵施設」の建設費一・一兆円も一・六兆円に膨らむ。ともに国民負担の増加につながる。

 
 

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【経済】

原発国民負担「過去分」2.4兆円 福島第一処理費倍増21.5兆円

写真

 経済産業省は九日、自民党の会合や有識者会合などで、福島第一原発廃炉など事故処理にかかる費用が、二〇一三年に試算した十一兆円から二一・五兆円に倍増するとの試算を示した。中でも被災者の損害賠償に充てる費用を捻出するため、「電力消費者は過去に原発の事故に備えた賠償資金を積み立てておくべきだった」として「過去分」の費用二・四兆円程度を原則すべての電力利用者の料金に上乗せする。原発を維持するため、さまざまな形で国民負担が膨らむ。 (吉田通夫)

 原発事故の賠償費用は、東京電力など原発を持つ大手電力会社が、契約者の電気料金に「一般負担金」などを上乗せして負担させる仕組みが事故後の一一年にできた。原発を持たない新電力は負担義務がなく、電気料金にも含まれていない。

 これに対し、経産省は「本来は電力会社が原発事業を始めた(一九六六年)時から、事故に備えて一般負担金を積み立てておくべきだった」として、大手から新電力に移行した消費者も含め「過去分」の負担金を請求する。現在、大手電力会社の契約者が納めている千六百億円の一般負担金の規模を基に、二〇一一年までに積み立てておかなければならなかった「過去分」は二・四兆円と試算した。

 二〇年をめどに大手電力会社の契約者だけでなく、新たに新電力に移った契約者にも、等しく請求し始める方針。経産省は、四十年かけて負担する場合、月に二百五十七キロワット時の電力を使うモデル世帯の負担額は月額十八円だと説明している。

 しかし、賠償費用の総額は七・九兆円に膨らむ見通しで、二・四兆円の追加負担を求めても足りない。残りは引き続き東電と大手電力会社の契約者に求めるため、大手の電力利用者は料金がさらに上がる可能性もある。このほか、廃炉費用は一三年試算の二兆円から八兆円へと四倍になる。東電に利益を上げさせて資金を捻出するが、東電管内の電気料金は他社の管内よりもさらに下がりにくくなる。

 放射線に汚染された土壌などを取り除く「除染」の費用も二・五兆円から四兆円に増加。取り除いた土壌を保管する「中間貯蔵施設」の建設費一・一兆円も一・六兆円に膨らむ。ともに国民負担の増加につながる。

 
 

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<理不尽な「過去分」請求 福島第一の処理費 国民負担、不公平感の恐れ>16/12/10東京新聞

経済産業省は九日、有識者会議などで求められていた東京電力福島第一原発廃炉などに必要な費用の試算をようやく示した。費用試算を引き上げるのは二回目で、今後も膨らむ可能性を認めるなど、原子力政策のほころびは明らか。しかし十六日には電気料金の引き上げなど国民に負担させるための方法を正式に決めてしまう方針で、拙速な議論の進め方に批判があがっている。 (吉田通夫)

■見えない天井

 「合理的に見積もれる数字ではない」。経産省の村瀬佳史電力・ガス事業部長は、経産省と財界人らでつくる「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」(東電委員会)の会合後、福島第一原発廃炉費用について、まだ増える可能性を認めた。損害賠償や除染と合わせて事故処理に必要な費用として試算した二一・五兆円は、まだ「上限」とは言えない。

 天井の見えない費用をまかなうため、経産省は今回、全国的に国民すべての電気料金に含まれる大手電力会社の送電線の利用料「託送料金」を引き上げるなど、国民負担を増やす方針を固めた。

 託送料金は、国民に広く負担を求める手法として税金と同じ性格を持つ。ただし、税制の変更と異なり財務省や与党との厳しい調整が必要なく経産省が審査で必要と認めれば引き上げることができる。審議の過程で「国民負担を求めるなら税金にして国会や国民の厳しい監視を受けるべきだ」との意見もあったが、経産省は自省にとって都合の良い手法を手放さなかった。

■分かりにくさ

 国民負担を増やす理屈として経産省が持ち出したのが「過去分」という分かりにくい費用の請求だ。「過去に原発でつくった電気の料金は、事故に備えて上乗せしておくべき賠償費用が反映されていなかった」として、新電力に移った消費者も含めて追加の費用を請求する構えだ。

 しかし、一般の企業は決済を終えた商品の価格を後から変えて費用請求することはできない。しかも、過去の電気料金を決めてきたのは大手電力会社と経産省だ。さらに、何十年も原発からの電気を使ってきた高齢者と、まだそんなに使っていない若者が「過去分」として同様に負担することも不公平だ。

 与野党の議員や有識者からは「理不尽な国民負担の前に、両者の責任を明確にし、電力会社の株主を含めて資金の拠出を求めるべきだ」(自民党河野太郎衆院議員)などと批判が続出している。

■わずか2カ月

 有識者会合が始まった当初、委員からは「費用と負担の規模が分からないと議論できない」との声が相次いでいたのに、経産省は「数字が出ると議論にならなくなる」(幹部)と伏せ続けた経緯がある。漠然とした議論で負担方法だけ先に固めてきた。九日に数字を示したとたん、「取りまとめの段階」(世耕弘成(せこうひろしげ)経済産業相)となった。

 この間わずか二カ月強。福島第一原発以外にも、予定より早く廃炉にする原発の処理に必要な費用も託送料金に上乗せ。新電力の利用者に負担と引き換えに原発の電力を使いやすくする仕組みも導入する。

 原子力政策に詳しい立命館大国際関係学部の大島堅一教授(環境経済)は「東電の問題と、まったく別の電力自由化の問題を一緒くたに議論しており、理解できる人は少ないだろう」と指摘する。しかし東電委員会委員長の伊藤邦雄一橋大大学院特任教授は九日の会合後、「国民が(議論に)どうついてきているかは私が判断するところではないが、拙速とは思っていない」と述べた。

<今年もタダ飯タダ酒 安倍首相ポチ記者“ごっつぁん忘年会”>16/12/27日刊ゲンダイ

26日夜、真珠湾を訪問するため米ハワイに向け出発した安倍首相。ところが、その直前の首相動静を見ると、〈5時47分、内閣記者会との懇談会〉とある。外遊前の忙しい時間に何をしていたかといえば、菅官房長官、萩生田官房副長官らとともに首相担当記者をねぎらうための“忘年会”に出席していた。

 この懇談会は過去の歴代首相も官邸や公邸で開催してきた恒例行事。今年は当初、28日の官庁御用納めに予定されていたが、真珠湾訪問が決まり、急きょ26日に前倒しされたという。

 記者クラブに詰めている記者が、普段から懇意にしている政治家や役人と酒食を共にするのは珍しいことではない。ただし、割り勘や会費制が“暗黙のルール”。ゴチになってしまうと、権力側に都合の悪い話が書けなくなってしまうからだ。ところが、内閣記者会の懇談会にかかる経費はすべて国費で賄われるのが通例となっているという。毎年、有名寿司店のケータリングやらローストビーフやら“豪華メシ”がドーンとふるまわれるそうだから、イイ気なもんだ。

 ■安倍首相との“撮影会”に記者が列

 タダ酒、タダ飯と聞いただけでア然だが、“ごっつぁん忘年会”には驚く恒例行事が他にもあるらしい。

「安倍首相と一緒に“撮影会”をするのが内閣記者会の恒例イベントとなっています。記者が喜々として列をなし、首相もご機嫌でニコニコしながら応じ、順番にスマホでツーショットを撮影していくのです。帰省した時に親戚に自慢したり、過去にはキャバクラで見せびらかす若手記者もいました」(ベテラン記者)

 権力者をアイドルみたいにあがめ、なれ合い、骨抜きにされていく――。それが今の安倍ヨイショ報道、国会での強行採決につながっていることを記者クラブの若い連中は分からないのだろうか。

 政治評論家の山口朝雄氏がこう言う。


「第2次安倍政権になって、内閣への権力集中と情報の集約が顕著になりました。経験の浅い若手記者は政権幹部にかわいがられ、情報をもらうことが仕事だと勘違いしているのかもしれません。大マスコミの上層部がしょっちゅう安倍首相とゴルフをしたり、食事を共にしているのだから無理もありませんが、政権とベタベタしているだけの記者は失格です」

 すっかり飼い慣らされてしまった記者クラブのポチ記者たち。まさか、「2次会は政府専用機で」なんてノリで真珠湾訪問にゾロゾロ付いていってるんじゃないよな。
 

< 【社説】 もんじゅ廃炉 原発依存にサヨナラを>東京新聞2016/12/22

高速増殖炉がだめなら高速炉-。それではあまり意味がない。もんじゅだけのことではない。原発依存の仕組み自体が、実は“金食い虫”なのだ。サヨナラもんじゅ、そしてその背景の原発依存。

 莫大(ばくだい)な費用がかかる。危険なナトリウムを大量に使っているのに管理はずさん、だから動かせない-。国民の側から見れば、もんじゅを残す理由はない。

 廃炉の決定はむしろ遅すぎた。

 何度も書いてきたように、トラブル続きで長年ほぼ止まったままのもんじゅの維持に、毎年二百億円もの費用をかけてきた。

 建設費と運転・維持費を合わせると一兆四百十億円にも上る。廃炉にも三千七百五十億円かかるという。そのすべてが税金だ。

 さらに大きな問題は、政府の意図が廃炉というより、高速炉への置き換えにあることだ。

 政府がもんじゅの“後継”に位置付けるのが高速炉。もんじゅとの違いは、核燃料を増やせないことである。しかし、高速中性子を使って使用済み核燃料を燃やすことはできるという、ハイレベルの原子炉には違いない。

 しかも、原型炉のもんじゅよりワンランク上の実証炉をめざすという。さらに莫大な費用を要することは、想像に難くない。

 フランスが計画中の高速炉「アストリッド」は、現時点で最大一兆円の建設費が見込まれており、日本に共同研究、つまり費用負担を求めているのが現状だ。

 文部科学大臣は「国民の皆さまに納得していただけるもの」と繰り返す。

 だが、国民の過半が原発再稼働に異議を唱える現状で、看板を掛け替えただけで、新型原子炉に巨費を投入し続けることに、納得できるはずもない。

 高速炉開発の背景には、既に破綻が明らかな核燃料サイクル、つまり使用済み燃料を再処理して再リサイクルする仕組み、ひいてはごみ処理にめどを付け、原発依存を維持したいという意図がある。

 経済産業省は、再処理事業の総費用を十二兆六千億円と見積もっていた。その一部は電気料金にすでに転嫁されている。

 燃やすだけの高速炉ではリサイクルはなりたたない。破綻を繕う文字通りの弥縫策(びほうさく)にも、納得できるわけがない。

 繰り返す。高速炉計画も白紙に戻し、核燃料サイクルは中止して、安全で安価なもんじゅ廃炉と、核のごみ減量の研究に、地元福井で専念すべきだ。 

<退位「議論に感謝」 天皇陛下83歳に>2016/12/23

天皇陛下は二十三日、八十三歳の誕生日を迎えられた。これに先立ち皇居・宮殿で記者会見し、退位の意向を強くにじませた八月のビデオメッセージについて「この先の在り方、務めについて、ここ数年考えてきたことを内閣とも相談しながら表明しました」と振り返った。その上で「多くの人々が耳を傾け、おのおのの立場で親身に考えてくれていることに、深く感謝しています」と、政府が有識者会議を設置するなど国民的議論となっていることに謝意を示した。

 陛下がビデオメッセージ公表に際して内閣と相談していたことや、公表後の心情を明かしたのは初めて。

 一月のフィリピン訪問では、滞在中の交流体験に触れ「両国の今日の友好関係は、先の大戦で命を落とした多くのフィリピン人、日本人の犠牲の上に長い年月を経て築かれてきました」と述べ、さらなる友好の発展を願った。そして「戦没者の霊の鎮まるそれぞれの場を訪ね、冥福を祈る機会を得たことは、ありがたいことでした」と述懐した。

 発生から五年が過ぎた東日本大震災では、被災地の視察で復興への努力を見たとする一方、今も多くの人が困難な状況にあることを懸念。「国民皆が寄り添い、協力していくことが必要と感じます」と語った。

 また、熊本地震の被災者を「人々の不安はいかばかりであったかと思います」と気遣い、八月の台風10号による大雨で犠牲者が出たことにも「痛ましいことでした」と思いを寄せた。

 十月に亡くなった、昭和天皇の末弟で陛下の叔父に当たる三笠宮さまを「戦争を経験された皇族であり、そのお話をうかがえたことは、意義深いことでした」としのんだ。

 宮内庁によると、陛下はこの一年間、内閣から上がってきた千三十一件の書類に署名、押印し、大臣ら九十七人の認証官任命式に臨むなどの国事行為をした。国事行為以外の公務は、皇居での各界代表者らとの面会が七十五回あり、静養以外で十一府県の二十一市九町三村を訪れた。

 
 

 

<原発避難いじめ>原告団「報道は氷山の一角」河北新報16/12/22

東京電力福島第1原発事故で避難した子どもへのいじめが相次いで発覚したことを受け、今年2月に発足した「原発被害者訴訟原告団国連絡会」が22日、「報道されたのは氷山の一角だ。大人にも心ない仕打ちが続いている」として、避難への理解を求める声明を発表した。
 連絡会は、原発事故に伴う損害の賠償を東電などに求めた全国21件の訴訟の原告で結成。原告数は1万人近くに上る。
 連絡会の幹部が22日、東京都内で記者会見。南相馬市から横浜市に避難中の松本徳子さん(55)は「慣れない生活を送る親が苦しむと思って、いじめられていると言い出せない子もいる」と話した。
 郡山市から子ども2人と大阪市に避難している森松明希子さん(43)は「避難者に対する大人社会の無関心や偏見がそのまま子どもの社会に移っている」と訴えた。