2016-08-26から1日間の記事一覧

『あだ名の人生』池内紀(みすず書房06/12)を読む

「最後の文士」高見順,「二科の総帥」東郷青児,「大いなる野次馬」大宅壮一,「オバケの鏡花」泉鏡花などなど全二十四人。 こういう類いの人物伝は、史記の列伝以来掃いて捨てるほどいくらでもあるだろう。現代でもそれは増え続けている。永井路子『悪霊列…

チェーホフ 追加 、更に

ところで阿刀田と同じく作家である阿部昭の『短編小説礼賛』(岩波新書86.8)という一冊がある。手許にあ るのは13刷だから、それなりに息長く売れ続けたものだろう。これには、鴎外,モーパッサン,ドーデ,独歩,ルナール,菊池寛,志賀直哉,マンスフィール ド,…

チェーホフ追加  (2007.1.1)

阿刀田高志の『チェーホフを楽しむために』(「小説新潮」連載05年)を読んだ感想として、次のことを結論として記した。「阿刀田の語りを簡単に結論づければ、チェーホフの真価は短編小説よりやはり戯曲ですね、ということになる。逆に言えばチェーホフは四…

『チェーホフを楽しむために』阿刀田高(新潮社06.7.30)を読む

この一冊は、阿刀田高が2005年4月号から同年12月号まで「小説新潮」に連載したエッセイをまとめたものだ。 まず本論に入る前に、チェーホフの生い立ちから死の三年前の結婚までが一章たてられていて、全体のチェーホフ像が提示されているのは当然なが…

.『松本清張あらかると』阿刀田高 (中央公論社97.12)を読む

これは、1994年から96年にかけて中央公論社から出された『松本清張小説セレクション』36巻それぞれの末尾に付けた解説をまとめたものだと言う。 単なる解説に止まらず,編者阿刀田高のエッセイ風感想であり,自ら小説家としての視点から,松本清張の…

「異邦の薫り」福永武彦 (新潮社79/4)を読む

それぞれの詩集がカラーで載っている口絵写真も貴重。 森鴎外(新声社)<於母影>, 上田敏<海潮音>,永井荷風<珊瑚集>,堀口大学<月下の一群>,日夏耿之介<海表集>,佐藤春 夫<車塵集>,<山内義雄訳詩集>,鈴木信太郎<近代仏蘭西象徴詩抄>,茅野蕭々<リルケ詩抄>,高村 …

『生きかた名人』池内紀 (集英社04/3)を読む

文士という言葉があり、それがなお残っていた戦後の頃まで、またそうではなくとも文筆でも名を残した一癖も二癖もある人々の銘々伝。著者は、ここに登場させた過去の人々に深い共感を持ち、温かく語る。(16/4) ▶『青春と読書』(集英社)に「名人さがし」の…

『軍用露語教程』小林勝(コレクション戦争と文学15『戦時下の青春』/集英社12/3)を読む

もう60年ほど以前に読んで強い感興があったもの。今回読見返して、そのときの感じをしたところと、歳月に紛れてもう忘れていたところとあり、半分は新しく読んだという感じ。 特攻要員として予定されている予科士官学校生徒の、しかし一方ではソ連侵攻部隊と…

『イブのおくれ毛』田辺聖子 (文芸春秋/95/5)を読む

<ベスト・オブ・女の長風呂>の1。ノヴァーリスの言葉として<男は抒情的であり、女は叙事的である。結婚は劇的である。>とあるものを、日本は関西の世界で描いて見せるエッセー群。まぁまぁ作者が、読者に興味を持って貰えるよう工夫しつつ、週刊誌に連載し…

『桂米朝句集』岩波書店/2011/7を読む

<風鈴も鳴らず八月十五日>。敗戦の時米朝は20歳で、内地のどこかの連隊にいたようだ。天皇の終戦放送が流れて暫くは、多分風鈴も鳴らないような静寂があり、続けて悲喜こもごもの庶民のため息が゛溢れたのかも知れぬ。 この一句で、米朝は俳人の一人となった…

『亡き人へのレクイエム』池内紀 (みすず書房16/4) を読む

わたしの青春の日々によく聞いた名前の数々。あの時代は既に遠く去ったのだ、という感慨を覚える。そしてまた、これらの人々により戦後の文化の大きな流れは作られていたんだという歴史を、改めて振り返ることになる。(16/7)▶みすず書房より「ペンによる肖像…

『銀座24の物語』椎名誠ほか (文芸春秋01/8)を読む

これは<銀座>を舞台にした短編を集めたもの。多くの人々にとって<銀座>は懐かしい盛り場であり、それに関連した短編ともなれば、やはり一寸は覗いてみたくなる題材でもある。 それぞれの作家が<銀座>をどう料理するのだろうという期待もある。 それ以上でも…