もう60年ほど以前に読んで強い感興があったもの。今回読見返して、そのときの感じをしたところと、歳月に紛れてもう忘れていたところとあり、半分は新しく読んだという感じ。
特攻要員として予定されている予科士官学校生徒の、しかし一方ではソ連侵攻部隊としての予定も考えられるという、軍の学校生活にあつたロシヤ語の時間。そして課外に教官から貸与された小説にあった、素敵な自然描写の数行にひたされる一人の生徒の時間。
敗戦期に近いひとりの青年の辿る時間が、悲しくも美しい。やはり特色のある反戦小説としての傑作だった。