「明平さんのいる風景」玉井五一ほか編 (風媒社/99/6)

サブタイトルは<杉浦明平生前追想集>

 杉浦明平という作家のルポは、若い頃いくつか読んだ。農漁村のじめじめした空気がなく、爽快な印象が残っている。

 今度追想を集めたこの本を読んで、やはりその印象に変わりなかった。

 戦後の時期に、<挫折>しなかった、ほんとうの意味で知性というものを具えた希有な作家だったのか。

▶内容

明平さんとカレーライス 本多秋五著. 黒い怒りのゆくえ 鶴見俊輔著. 杉浦明平さんと「群像」と私 大久保房男著. 藪の中の光 木島始著. 死ぬまで生きよう 池田竜雄著. 明平さんのユーモラスな語り口 針生一郎著. ニベもない大快楽人 津野海太郎著. 真ん中の杉浦 川崎彰彦著. 戦後草創の“未来の会” 木下順二著. 近望崋山、遠望杉浦明平先生 小沢昭一著 宮腰太郎著. 哄笑の文学 玉井五一著. 明平さんの哄笑 土方鉄著. 人間模様と文学と はらてつし著. 『小説渡辺崋山』執筆のころ 山本【ヒトシ】著. 動く日本列島 水谷勇夫著. 眼の前の大きな壁 岡田孝一著. 成熟した眼 花田清輝著. 杉浦明平『ノリソダ騒動記』 丸山真男著. 杉浦明平『田園組曲』 長谷川四郎著. 小説渡辺崋山 藤枝静男著. ミンペイさん 佐々木基一著. 驥尾に付して五十年 川口務著. 畑と書斎 岩田行大著. 清田小学校の卒業生 大谷将夫著. 傘寿・明平さん 『海風』同人座談.
抄録    渥美半島の農漁村に根を下ろし、ルポルタージュの執筆から、イタリア・ルネッサンス文学、歌人の研究まで、縦横無尽の活躍を続ける杉浦明平。その愛すべき実像を、同時代文学の僚友や身近な人々の証言によって活写する