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『ぼくの花森安治』二井康雄 (CCCメディアハウス/2016/8)を読む

 <暮らしの手帖>には若い頃から何かと関心があった。何冊かの保存版は今でも本棚の何処かに眠っている筈だ。

 それは日常的な生活に、庶民がどう暮らしを快適にできるだろうかという、この雑誌が追求した中心的課題よりも、垣間見える編集長の花森安治が、持つ人生観のようなものに惹かれたのかも知れない。この本はそれらを編集部にいた長い経験を経た著者が活き活きと語る。

 例えば、先の戦争中の自分の体験に対してして、花森はこう書いているという。

  <僕は確かに戦争犯罪をおかした。言訳をさせてもらうなら、当時は何も知らなかった、だまされた。しかしそんなことで免罪されるとは思わない。これからは絶対だまされない、だまされない人をふやしていく。その決意と使命感に免じて、過去の罪はせめて執行猶予してもらっている、と思っている。>

 これは東京帝大卒業後、大政翼賛会宣伝部に在籍して、当時の軍国主義的宣伝活動に積極的に参加していた時期を、振り返って語った自己批判だ。立派だと思う。

 一つの時代をつくり、作り続けようという出版活動の内面に迫る快著。

 

花森安治略年譜:p165~168 文献:p173
抄録    晩年の花森安治に、足かけ9年仕え、大橋鎭子には、亡くなる寸前までのほぼ40年仕えた筆者だからこそ分かる『暮しの手帖』が貫いた生活哲学と、世の中を見る目、まっとうな暮しのありようを、余すことなく説き明かす。
〈二井康雄〉1946年大阪生まれ。69年(株)暮しの手帖社に入社、編集部に所属。本誌の副編集長等を務め、2009年に定年退職。映画ジャーナリスト、書き文字ライター。