<平野啓一郎氏が警鐘 「世の中が全体主義に移行している」>
一方的にまくし立てるような国会答弁から「反知性」の烙印を押されている安倍首相。当然、作家・文化人など言論人からの批判が多いが、平野啓一郎氏(41)も急先鋒のひとりだ。SNSなどで非常に多くの発信をしているし、「世の中は新自由主義から全体主義に移行している」と警鐘を鳴らす。安倍政権の危うさと時代の危機を語ってもらった。
■理念的にも現実的にも愚かな安倍外交
――平野さんもそうですが、作家、文化人の方は総じて安倍政権に対して批判的ですね。
基本的に自由であることが作家にとっては、というか、一人の人間として、大変、重要ですから、その自由が拘束されていく感覚に対する抵抗感ですね。それに作家は政治的発言がしやすいというところもあります。職種によっては原発反対とか五輪反対とか言うと不利益があるでしょうけど、僕らにはありません。むしろ、よくぞ言ってくれたと読者が応援してくれたりしますし。
――やはり、安倍政権になってから、世の中、きな臭くなったと思いますか?
小泉政権も評価していないし、民主党の野田政権にもものすごいフラストレーションがありました。でも、小泉政権時代には今の自民党の改憲草案のようなものがメーンストリームになるとは思ってもみなかった。小泉氏も決してリベラルではないが、今の自民党の中心にあるような暗い国家主義はなかったと思います。あの時代は、新自由主義で、勝ち組は努力の結果であると。苦境の人は努力が足りないという考え方でした。そうやって、弱者は見捨てられたわけですが、今は経済的苦境にある人は見捨てられるだけでなく、批判される。社会保障という面で国に「迷惑をかけている存在」だと、糾弾の対象になってきている。これは非常に危ない風潮だと思います。
――ナチスの優生思想に通じるような?
自民党はかつてと同じ党ではないですね、もはや。安倍政権だけじゃなく、社会的風潮そのものが新自由主義から全体主義へと変わりつつある危惧を覚えます。
――安保法制の審議の進め方や中国を敵視するような外交姿勢、この辺はどう思われますか?
とにかく、象徴的な「敵」が必要なんでしょう。日本という国が戦後、曲がりなりにも続けてきた平和国家としての歩みが急激に変化しています。これは理念的に間違っているだけでなく、現実的にも何の得もない。
南スーダンや中東はどうしようもない泥沼です。一体、どういう期間、何を目指して、どう関わっていくのか? 何のビジョンもない。自衛隊員の犠牲も出かねないし、日本もテロの標的となり得る。愚かとしか思えません。
北朝鮮や中国に対しても、強気に出れば、いつか相手が参りましたと言うと思っているのでしょうか? 拉致問題しかり、どういうプロセスで問題の解決をイメージしているのか、まったくわかりません。中国に対しても日米同盟の軍事力を強化して、抑止力が高まったのか? 尖閣問題で中国と軍事的に衝突したとして、どんな収拾のつけ方があるのか? 中国だって国内のナショナリズムが沸騰して、引くに引けなくなる。恐れ入りましたとおとなしくなるはずがない。
――何のための軍事力強化なのか。政治家が自分の力を誇示したいだけではないのか。そんな印象すら受けますが、さて、米国ではトランプ大統領が誕生します。来年には世界中で国家主義者が誕生、台頭する懸念があります。
フランスも極右のマリーヌ・ルペンが支持を伸ばしている。ポーランド、ハンガリーなど、東欧では右派政権が誕生していますし、とんでもない法案を通しています。
――グローバリズムへの反動ですか?
それもありますが、いまは世界的に国家そのものが弱体化しているのだと思います。国家が財政的にも弱体化し、アイデンティティーも失いつつある。その反動が起こっているのではないか。
――どういうことでしょうか?
アップルやグーグル、アマゾンみたいなグローバル企業が通信だけじゃなく、社会的なインフラを広範に担うようになると、人々にとって、国家への依存度が低下していく。それに対して、国家にはものすごい危機感がある。そこで、グローバル企業が担えない国家権力の源泉、徴税権であったり、軍事力が反動として強化されていく。本来であれば、外交交渉や民間の交流で国際平和を維持していくべきなのに、やみくもに軍事力を強化する。しかし、国家がなければ困るのは社会的弱者であって、むしろその点でこそ機能すべきなのに。
――安倍首相の場合はどうですか?
彼の場合、確固たる国家観というよりも祖父の悲願である憲法改正をやりたいというだけではないでしょうか。そこに至る過程、最終的な国家像は支離滅裂です。
――それなのに、選挙のたびに大勝している。
選挙制度がこれでいいのか、という問題もあるし、そもそも、安倍政権の態度は小選挙区的ですよね。1票でも勝てば、何をやっても許される。相手がどれだけ票を取ろうがお構いなし。悔しかったら選挙で勝ってみろ。そんな態度じゃないですか。もちろん、民主主義ですから、選挙で多数派の布陣を握った方が有利に議論は進められる。しかし、その前提として少数派の意見に真摯に耳を傾けなければならない。それなのに多数決で勝てば、全権委任を得たように誤解しているとしか思えません。
民主主義の前提が崩れている
――閣僚の暴言、放言も後を絶ちませんね。
政治倫理は現政権になってからガタガタになりました。これを回復するのに、どれだけ時間がかかるのか? そもそも回復できるのか? 16年前、森元首相は「日本は天皇中心の神の国だ」と発言し、これが政権の命取りになった。
このレベルの暴言は今、ゴロゴロあります。機動隊員の土人発言を「差別と断じることはできない」と言って擁護した鶴保沖縄担当相なんてメチャクチャなのに、辞めさせられない。閣議決定でこの発言を擁護までする。山本農水大臣の強行採決発言だって、本来であれば、クビが飛んでいなければおかしい。
――選挙で選ばれた政権が暴走していく。民主主義の限界、欠陥という気もします。
< ピアニストの中村紘子さん死去>2016.7.29 00:10
ショパン国際ピアノコンクールで4位に入賞し、世界各国のピアノコンクールの審査員も歴任した世界的ピアニスト、中村紘子(なかむら・ひろこ、本名・福田紘子=ふくだ・ひろこ)さんが7月26日に大腸がんのため死去していたことが28日、分かった。72歳だった。葬儀・告別式は近親者で行った。喪主は夫で作家、庄司薫(しょうじ・かおる=本名・福田章二)氏。
山梨県生まれ、東京・世田谷育ち。指揮者の小澤征爾さんらを輩出した桐朋学園「子供のための音楽教室」で幼児期から学んだ。慶応義塾中等部在学中の昭和34年に日本音楽コンクールで史上最年少で第1位特賞を受賞し、翌35年にはNHK交響楽団初の演奏旅行のソリストに起用された。その後、米ニューヨークのジュリアード音楽院に留学。1965年の第7回ショパンショパン国際ピアノコンクールで4位に入賞した。
チャイコフスキー国際音楽コンクール、ショパン・コンクールなど数多くの国際コンクールの審査員も歴任。その体験に基づく著書「チャイコフスキー・コンクール」は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。
< 映画監督で脚本家の松山善三さんが死去 >2016.9.2 20:21
「名もなく貧しく美しく」などの作品で知られる映画監督で脚本家の松山善三さんが8月27日、老衰のため死去した。91歳。
昭和23年、松竹に入社。木下恵介監督の助監督として、「カルメン故郷に帰る」や「二十四の瞳」などに参加。木下監督による脚本の口述筆記を務め、シナリオ作りを学んだ。その後、脚本家として「人間の條件」や「恍惚の人」「人間の証明」などの作品を発表した。
「二十四の瞳」の撮影時に親しくなった女優の高峰秀子さんと30年に結婚。36年には、高峰さんを主演に聴覚障害者の夫婦を描いた「名もなく貧しく美しく」で監督業に進出。「われ一粒の麦なれど」「ふたりのイーダ」「典子は、今」など社会的弱者を取り上げた作品を数多く手掛けた。
<ポーランドの巨匠 映画監督アンジェイ・ワイダ氏死去 16/10/10 11:51>J- CAST
ポーランド映画の巨匠、アンジェイ・ワイダ監督が2016年10月9日に死去した。90歳だった。AFP通信などが報じた。
1926年、ポーランド北東部スヴァウキ生まれ。第二次世界大戦中は反ナチスのレジスタンス活動に参加した。ウッチ映画大学を卒業後、1954年に「世代」で監督デビュー。「地下水道」(56年)と「灰とダイヤモンド」(58年)と合わせた「抵抗三部作」ではポーランド社会の苛酷な運命を描き、国際的評価を得た。
81年には、ポーランド民主化を率いた自主管理労組「連帯」を題材にした「鉄の男」を発表し、カンヌ映画祭のパルムドール(最高賞)を獲得した。民主前後の89~91年には上院議員を務めた。2000年以降も「カチンの森」(07年)や「ワレサ 連帯の男」(13年)などを発表していた。
日本との関わりも深く、87年には「京都賞」を受賞。賞金を基金に、母国の古都クラクフに日本の美術品を展示する「日本美術技術センター」を設立した。
<女性初のエベレスト登頂、田部井淳子さんが死去>読売新聞 10月22日(土)17時53分配信
世界最高峰エベレスト(8848メートル)の登頂に女性として世界で初めて成功した登山家の田部井淳子(たべい・じゅんこ)さんが20日、腹膜がんで死去した。
77歳だった。告別式は近親者で済ませた。喪主は夫、政伸さん。
福島県三春町出身。昭和女子大卒業後、本格的に登山を始め、1969年に山岳会「女子登攀(とうはん)クラブ」を設立。75年には「エベレスト日本女子登山隊」の副隊長としてエベレストに挑み、同年5月16日、女性として世界で初めて登頂に成功した。6400メートル地点のキャンプ地で雪崩に襲われるアクシデントを乗り越えての快挙だった。
92年には欧州最高峰、ロシアのエルブルース(5642メートル)に登頂し、世界7大陸最高峰を制覇した世界初の女性登山家となった。
『近代の文法』=「思想」94年11月号
明治と云う<近代社会>をどうつくろうと、それぞれの分野で如何なる葛藤があったかの具体的物語。
死産される日本語・日本人(酒井直樹)
国民の誕生と「日本人種」(富山一郎)
国文学の誕生(藤井貞和)
地理思想と国民国家形成(水内俊雄)
明治天皇の巡幸と「臣民」の形成
(佐々木克)
万歳の誕生(牧原憲夫)
運動会の思想(吉見俊哉)
近代日本における権力のテクノロジー
(T・フジタニ)
女の声を拾う/明治初期小新聞の投書
(平田由美)
「少年世界」と読書する少年たち
(成田龍一)
性家族の肖像(川村邦光)
どの問題でも簡単に転換出来るものは・・なかった。例えば「万歳」ひとつを見ても。これは雅楽で万歳という詞があり、読みは呉音でマンザイだった。一方行事等ではバンゼイと唱えられたがこれは漢音。この二者を発声し易いものとしてバンザイと替えられた。
今あらためて<明治維新>と<江戸時代>との+-を考えさせられる一編。