『あだ名の人生』池内紀(みすず書房06/12)を読む

「最後の文士」高見順,「二科の総帥」東郷青児,「大いなる野次馬」大宅壮一,「オバケの鏡花」泉鏡花などなど全二十四人。

こういう類いの人物伝は、史記の列伝以来掃いて捨てるほどいくらでもあるだろう。現代でもそれは増え続けている。永井路子『悪霊列伝』、森銑三校註『近世奇人伝』、駒田信二『近代奇人伝』等々。そうそう鴎外の史伝も長いが人物伝だ。
 と言うことは,我々人間にとってもっとも関心があり、興味をかき立てられるのは、やはり他人という人間だろうか。

 そこに敢えて<あだ名>という切り口で,重ねて描いて見せる、これまた人間の物語。
 どこが違うのか。ここには「名人如泥」という一章がある。これはおなじみ石川淳の『諸国畸人伝』にある「小林如泥」という一章が背景となっているように見えた。
 読み比べるのも一興だろう。