< ポーランドのアンジェイ・ワイダ監督死去>16/10/11/

 【ベルリン時事】共産主義体制下にあったポーランドで、弾圧を受けながらも反骨精神に満ちあふれた映画を撮り続けた巨匠、アンジェイ・ワイダ監督が9日、死去した。90歳だった。AFP通信などが報じた。

 反ナチズムを訴えた「抵抗3部作」で国際的な評価を獲得。世界三大映画祭の一つ、カンヌ国際映画祭で1981年、最高賞パルムドールを受賞した。

 

26年、北東部スバウキ生まれ。第2次大戦中は反ナチスレジスタンス活動に従事。戦後、画家を目指してクラクフ芸術アカデミーに入学したが、進路を変え、ウッチ映画大学に進んだ。

 54年、若者によるレジスタンス活動に焦点を当てた「世代」でデビュー。「地下水道」(56年)、代表作となった「灰とダイヤモンド」(58年)と合わせた「抵抗3部作」で、歴史に翻弄(ほんろう)されたポーランドの悲哀を追った。

 労働英雄として祭り上げられた男の悲劇を描いた「大理石の男」(77年)の続編に当たる「鉄の男」(81年)では、80年に始まった自主管理労組「連帯」の抵抗運動を取り上げ、パルムドールを受賞した。しかし、反体制的な作風が問題視され、映画人協会会長の座を追われた。

 民主化後の89年から91年まで上院議員を務めた。その後も映画製作を続け、軍人だった自らの父親も犠牲になったソ連秘密警察によるポーランド人将校虐殺を題材にした「カティンの森」(2007年)、「連帯」を率いた後、国家指導者に上り詰めたワレサ元大統領の半生を追った「ワレサ 連帯の男」(13年)を手掛けた。

 日本との関わりが深く、87年に京都賞の精神科学・表現芸術部門を受賞。賞金でクラクフに日本美術技術センターを設立した。また、オムニバス映画「二十歳の恋」(62年)では、石原慎太郎東京都知事らと監督を務めた。 

 

 

<ドキュメンタリー映画「シロタ家の20世紀」>葉月

戦後、日本国憲法第24条の草案作りにベアテ・シロタ・ゴードンさん等が協力され、日本女性の地位向上のために一役かったことは最近になって明らかにされた。そのベアテさん一家の「シロタ家の20世紀」(ドキュメンタリー)という映画をみた。

監督の藤原智子さんは2005年にやはりドキュメンタリー「ベアテの贈り物」を作成している。その作品をパリの日本文化会館で上映した際、パり在住のアリーヌさんというベアテの従妹の子供が偶然見ていて、映画の中の女の子は私ですと監督に名乗りでてくれたことから、この映画の製作に導かれて行ったということである。アリーヌはプログラムやサインなど膨大な一家の資料を既に集めていたようだ。

シロタ家はロシア領ウクライナ出身のユダヤ人である。たび重なる迫害を逃れて一家はキエフに移るが、ベアテの父の兄弟全員が芸術を志して優秀な成績を残し、ヨーロッパに移り住む。

その中で既にヨーロッパでピアニストとして活躍していたベアテの父レオ・シロタは、山田耕作の頼みもあって1929年から17年間日本に住み、東京芸大に席を置いた。日本の若い人の音楽育成に最も貢献した。愛弟子には有名な藤田晴子、園田高広、王馬煕純らがいる。数年前に亡くなられた藤田晴子さんが、何かの役にたてばと残された遺産がこの映画製作にもつながったともいわれている。 天才少年園田高広はやがて世界で演奏するようになる。2003年、園田の日本での記念講演の時は、来日されたベアテと対面した後、バッハのフーガを力強く弾いた。ピアノの曲と映像が画面に流れ、これがクライマックスととれた。

一方、ポーランドにいた兄ヴィクトル・シロタは第二次大戦のナチの台頭で政治犯として捕らえられ、彼の息子はノルマンディ上陸作戦で戦死する。素晴らしい音楽がずっと流れていたが「ポーランドパルチザン歌」の合唱曲は、とてもしみじみとして、胸にじんときた。また弟ピエール・シロタ(アリーヌの祖父)はヨーロッパで音楽プロデュ―サーとして活躍していたが、当時のプログラムや契約書のサインなど画面で多数紹介された。しかし後にアウシュビッツに送られることになる。

唐突ではあったが、最後にベアテさんはカナリア諸島に「平和を願う「ヒロシマナガサキ広場」があり、そこにスペイン語で刻まれた「憲法9条の碑」があることを指摘しこれを守らねばという。

私の頭をふとよぎったことは、最近特にガザ地区空爆が問題になったことである。もちろんユダヤ人としてパレスチナ問題には全く触れてないがどう思っているのだろうか。

『日本人は本が好き』(文藝春秋SPECIAL09.Spring)

サブタイトルは<人生の一書と出会う読書案内>と、いっても寝転んでも読める気軽なところもある読書エッセイ集。

 <巻頭エッセイ>は、鶴見俊輔,柳田邦男,植田康夫,外山滋比古の4人。
鶴見の文章に中里介山が出て来て、初めて知ったのは彼が「言論報国会」に入らなかったこと。流石サムライ。

<特集>は4項。面白かったものを()内に。
1/ジャンル別・この十冊。長谷部日出雄,椎名誠(血湧き肉躍る探険記),細谷亮太(生と死を考えるための本),中村彰彦,池内了(宇宙論への招待),池田清彦,関川夏央,林望,矢野誠一(藝談の傑作),出久根達郎,久保田展弘,水木楊など12人。

2/如何にして本と出会い,作家になったか。
津本陽,阿刀田高(読書の旅路),高樹のぶ子,赤瀬川原平,北原亜以子,逢坂剛,川上弘美(牛として),辻井喬(詩と小説の交流),西村京太郎(目標は清張、感謝は孫一),小池真理子,森村誠一(作家の発条),車谷長吉,夢枕獏,南木佳士,山本一力,北村薫,中川李枝子,三浦朱門,伊藤桂一など19人。

3/泣いたこの一冊。
小山田雄志,山藤章二,松山巌,藤堂志津子,篠沢秀夫,嵐山光三郎,児玉清,白石公子,常磐新平,永江朗(いつも犠牲になるのは子ども)など10人。

4/わが心の書。
堺屋太一,茂木健一郎,岡崎久彦,中西輝政,佐藤優,澤地久枝(語られざる真実),中井久夫,佐野真一(忘れられた日本人),長田弘(サミュエル・ジョンソン伝),安野光雅,辺見じゅん(北越雪譜),横尾忠則,塚本哲也(愛情はふる星のごとく),加地伸行,松井孝典(寺田寅彦の随筆),ロバートキヤンベル (米欧回覧実記),高田宏(バルムの僧院),鈴木秀子,樺山紘一,熊倉功夫(中世文化の基調),御厨貴,今谷明(シベリアに憑かれた人々),マーク・ピーターセン(怒りの葡萄),船曵建夫,野村進,五味太郎,浅井信雄,青柳いずみこ,鶴ヶ谷真一,加藤恭子(平家物語),中村稔(宮沢賢治詩集),芳賀徹など32人。

また<書棚拝見>は、日野原重明,田辺聖子,かこさとし,安藤忠雄
<鼎談>は丸谷才一,半藤一利,山崎正和の3人。
コラム<伝説の読書人>(荷風,熊楠,龍之介,乱歩,甚一)紀田順一郎
ほかに、<江戸のベストセラーと本好きたち>橋口侯之介。<旧制高校生が本を読み出したとき>竹内洋。<読書と翻訳の罠>鈴木孝夫。<入門書で出会う「私の一冊」>東谷暁。<本棚にある生と死>徳岡孝夫。

 右翼文化人から,9条の会発起人までを網羅した顔ぶれは,出版社の営業政策だが、まぁとにかく内容を問わず<本を読む>という一点で,大勢のおしゃべりをそこそこ愉しめる企画。(09/8)

      

『素晴らしき日本語の世界』季刊秋号(文春SPECIAL08/10)

学問的な日本語論よりも、雑談的日本語論が寝転んで読むのに相応しい。
とは云うものの、そこそこに興味深く作った雑誌。

◇ 巻頭エッセイは北原保雄/外山滋比古/大岡信
◇ 特集日本語の世界は杉本つとむ/久保田淳/遠藤織枝ほか9人。
◇ 漢字の世界は土屋秀宇ほか4人。
◇ 対談は丸谷才一/井上ひさし<頑張れ!日本語>
◇ 対談もうひとつは斉藤孝/武田双雲<身体的日本語論>

◇ 特集わがお国ことば賛で久保田恵/長谷部日出雄/高橋克彦/田部井淳子/立松和平/出久根達郎/池辺良/清水義範/藤本義一/高樹のぶ子/山本一力ほか10人。

◇ インタビュー坂東真理子<心に届く日本語を身に付ける>
◇ 特集手紙を書いてみようは黒田杏子ほか4人。
◇ 特集美しい日本語の話し方で山根基世ほか3人。
◇ 特集私が好きな日本語は外国人マーク・ピーターセンほか4人。
◇ 特集日本語で遊ぶの小佐田定雄ほか3人。

◇ 私の文章読本浅田次郎/木田元/高橋睦郎/阿刀田高/井波律子/長田弘高田宏/小池昌代/池内紀/諸田玲子/酒井順子ほか18人。
◇ 特別エッセイ田辺聖子<愛の義務/古典を伝えてゆくために>
◇ その他

 

ひとの数だけ日本語の現在への想いはさまざま。読者も共感と苦笑こもごもか

『NHKの正体/受信料支払い拒否の論理』

<週刊金曜日ブックレット05/4>

NHK放送が,国営ではなく民間放送でもない、ということで視聴者である国民にはどんなメリットがあるのだろうか。
 それはさておき、この一冊はNHKの権力へのすりよりにより<公正中立>という仮面に隠れ、行って来た国民に対する最近の背信的行いを挙げ,今後の国民のあるべき対応を提案するもの。

目次は以下の通り。
 相次ぐ不祥事と止まらない視聴者の反乱/海老沢会長独裁を支えた政治部支配/海老沢会長のぶざまな引き際/ヨン様から"兵器展"まで貪欲な商法/「沖縄タイムズ」の掲載予定原稿に"待った"/圧力が強まるさなか、民衆法廷番組を改竄/番組改竄で何が消されたのか?/受信料不払いは視聴者の「無言の反乱」(鳥越俊太郎)NHK受信料を拒否して40年(本多勝一)受信料支払い停止運動の論理(醍醐聡) 

 

(以下、全体の状況を把握するために『ウィキペディアWikipedia)』より引用)

1)受信料支払い義務とは何か。NHK側の意見。
 NHKおよび受信料制度の賛同者は、受信料は「NHKを見る・見ない」に対する対価ではなく、テレビ放送受信機所有者から公平に徴収される「特殊な公的負担金」であると主張する。

そして、受信料制度には以下のような目的があることから必要性があると主張される。
*公正な報道を行う為、政府・企業等の圧力に屈しないよう財源の独立性を維持する。

*国民の「知る権利(情報受領権)」を守る。一部の権力者等にとって都合の良い情報ばかりが流され、結果的にそれで国民が誘導されたり洗脳されたりすることを防ぐ。

*安定した財源を確保して、視聴率等の市場経済の原理に流されない機能を維持する。

*放送普及の為に日本全国広くあまねく放送が利用出来るようにする。文化の(生活基盤を支える)担い手となり、国民の生命・財産を守る。情報を共有して地域の人々の結束を深める。

*視聴率が得られなくとも必要とされる教育放送・福祉放送・災害緊急放送を行う。視聴率の影響を受けると、視聴者の興味本位的な番組やスポンサーに迎合する番組制作が行われて放送内容が低俗化することなどが懸念されることから、それを防ぐことにより放送そのものの質の維持・向上を図る。

*テレビ設置者に公平な負担を課すことによって、より民主的な事業運営を図る。株式会社の制度では、より多くの株を持っている株主がその会社を動かす権力を持っていると言える。このような事態になることを防ぐ為に特定の人や企業に負担が偏らないようにし、事業運営に民主主義を反映する。
などなどが受信料支払いシステムの趣旨ということだ。

2)視聴者である国民側から見た,現在の受信料システムの問題点。
 現行の受信料制度には様々な問題点が指摘されており、これらの理由から受信料制度の抜本的な変更や廃止が必要であると主張されることもある。
また、このことを理由として放送法で受信契約の義務が定められていてもそれを締結しない者、受信料を払わない者もいる。
 指摘されている問題点にはおよそ次のことがある。

*放送内容が公共放送として相応しくない
本来公共放送は、報道の中立性・公平性を確保し、視聴率が得られなくても必要とされる放送等を行い、また視聴率稼ぎの為に放送内容が興味本位になることを防ぐ等の目的を掲げているはずである。

*受信料で制作された番組等の営利的な転売
関連会社を通じて放送番組の放送権を転売したり(例:CS局やWOWOW大河ドラマ等、モバHO!へニュース番組)、民間会社を通じて放送番組がDVD等でビデオパッケージ販売されており、非営利の公共放送と呼べるのか疑問である。

*テレビ所有者の全員が受信料を払っているわけではない
在日外国人で受信料を払っていない人もいる。在日米軍の将兵の受信料は米軍側の拒否により支払われていない。

現在のところ、受信契約を締結せず受信料を支払っていなくても、実態としてNHKの視聴が可能であり、NHKは立ち入り調査権がないためテレビを所有していても所有していないとウソをついている人がいても、それらの視聴者に対しても事実上お咎め無しという状態になっている。また、「日本固有の領土である」と日本政府が主張する北方領土の受信機設置世帯からは徴収していないこと(外国政府が実効支配しており、徴収が困難なため)。

 また、企業などの事業所の契約率が低く、大規模な企業であっても実際の受信機設置箇所数ではなく「全社で3台分契約」といったアバウトな契約も少なくないと云われる。
ホテルや旅館の場合も、各部屋にテレビがあれば1室1契約必要であるが、正確な台数で契約していないホテル等も多い。

これでは払う方が損だということで受信料を納めることを拒む人も多い。そもそも、日本国内における正確な受信機の設置箇所数がはっきりせず、正確な契約率を算出すること自体が不可能な状況なのである。
また、2004年7月にNHKの不祥事が発覚して以来、受信料の支払いを拒否する世帯が急激に増え、受信料を払っている人が「なぜうちだけ払わなければならないのか」と不満を抱いている。

*地域開発スタッフらが違法な勧誘を行っている
地域開発スタッフ(NHKから委託を受けて受信契約の取り次ぎや受信料の徴収業務などを行っている業者。通称:地域スタッフ、以下同じ)などが放送法32条1項の最初の段落のみを強調した上で、「不満があっても法律にはきちんと従え」「法律を守らないのは非常識だ」と、半ば命令口調・半強制的・強迫的に受信契約をするよう繰り返し要求したり、また早朝・深夜といった時間帯に突然訪問されること、戸をどんどんと叩く行為、受信契約書であることを告げずに「ここにサインをして下さい」などと氏名・住所を記入させ、印鑑を押させるなど違法なケースがある。
NHKではスタッフに対して接遇教育を行ってはいるものの、効果が薄く言い訳のための教育となっているのが現状である。

地域開発スタッフはあくまでも「契約・集金代行業者」であってNHKとの雇用契約はなく、本来「NHKの者です」と名乗るのは職業詐称にあたる。
また、地域開発スタッフに対して「帰って欲しい」との意思表示をしたにもかかわらず退去しない場合は、刑法130条不退去罪に処することもできる。また、この地域開発スタッフの中には契約を迫る際に「今契約されれば、初回の請求は来月分からとさせていただきます」「今月分だけは無料とさせていただきますから」と虚偽の発言をした上にNHK受信料についての規定の説明もほとんど行わず受信契約(大半のスタッフは、その場で受信料の口座自動振替継続払いの手続きまでさせている)をさせ、実際には契約した当月分から請求されたというトラブルが多発している。

 

 *NHKの経営に視聴者が参加できない
NHKは受信料を支払う視聴者の放送局であるはずなのに、経営に視聴者の意思を反映する手段が限られており、経営委員会や放送番組審議会の構成員は企業経営者や学識経験者が占めていて、視聴者の意見を代弁しているとは言い難い。
また、NHK会長の記者会見にマスコミ関係者以外の視聴者が出席する方法が無い。

こういった状況から,すでに政界の一部からも聞かれたが、2006年1月から自民党の通信・放送産業高度化小委員会等の場で「放送受信料の支払拒否に対する罰則の導入」を内容とする放送法改正の検討を始めてられており、受信料制度廃止の実現は困難な情勢となっている。

 さて、このブックレットに、醍醐聰東大教授は次の趣旨で書いている。
受信契約は、NHK放送法にもとづいた放送をおこない、受信者が受信料を支払う民法上の双務契約とされる。
この立場によれば、放送法に違反した番組があれば、受信者はその部分に関して受信料を支払う義務はないとされる。
民法第533条 [同時履行の抗弁権] 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。)
 これが妥当な方法だと思うが,NHKは上記と異なる見解を表明しており、番組の内容がいかなるものであろうとも、視聴者は受信契約に定める受信料を支払う義務があるとしている、のは好く云っても悪質な押し売り同然ということになろう。

 この問題の現実的解決策は,WOWOWのようなスクランブル化だろう。受信料を支払っている世帯のみが視聴できる、というスタイルの選択こそNHK側に求めたい。

 しかし実際は、野球中継の放映権を民間放送の相場以上の金額で獲得したりするのをはじめ、視聴率獲得を意識した過剰な演出・表現を行ったり(近年ではニュース番組の『NHKニュース7』『News Watch 9』についてもこれらの事が非難されている)、必要以上に娯楽番組が多かったり、全国放送でありながら一部の地域を偏重した番組作りが行われたり、特定の政治勢力・公的組織を擁護する放送に内容が傾いているのではないかということを指摘する意見も少なくない。(現在では,自民・公明らの政権にすり寄っている報道)

*公共放送と言えども、結局自分の都合の悪いことは隠蔽する可能性があり、背後には国会や総務省等の国の機関があることから「報道の中立性を確保する」も机上の空論に過ぎないのではないか、またいかなる外力に屈しないということは、放送・事業内容も独善的になるのではないかという意見もある。

*安定した財源と法律・政策で守られ、不必要に組織が巨大化している
民間放送市場経済の原理のもと、その存続をかけて厳しい競争の中で動いているが、NHKは受信料収入という安定した豊かな財源が確保され、また特殊法人である故に法人税が免除されている等かなり保護・優遇された組織であると言える。

その財源により不必要なまでに子会社を設立して受信料とは別に多くの利潤をあげ、多くの官僚・上層部の天下り先になっているということ、また不必要な事業に多額の投資をしすぎているのではないかとの声もある。

 そんな中、2004年夏頃に多額のNHK番組制作費用がNHK番組プロデューサーらに着服される事件などの不祥事が相次いで発覚し、それにより従来から受信料を払っていた世帯からも受信契約の廃止・受信料支払いの拒否をされるに至っていることがある。

 

『漢字と日本語』高島俊男 (講談社現代新書/16/4/)

 漢字と日本語について、日中縦横に語る。いつもながら面白いのは、明治初期の西洋諸国の翻訳語。苦心の後が見える。これはそのまま、文字から見る日本と西欧諸国や中国との歴史とも言えるだろう。

 

講談社BOOK倶楽部

「外来語」はいつからあるのか?
「復原」と「復元」、「降伏」と「降服」のちがいは?
「空巣」の意味は、年寄りだけの家!?
「健康」「積極」「場合」は中国が日本から取り入れた外来語だった。
俗字、異体字、略字の由来は?
読んだその日から、つい誰かに話したくなる漢字雑学の数々。
中国文学者が漢字と日本語の面白さを洒脱に書き下ろしたPR誌「本」の人気連載、新書化第二弾!

 目次
  • まえがき
  • 1「漢語」のはなしから
  • 漢語」のはなしから/外来語/ゴミのはなし/ぼう、暴、暴露など/けだし、蓋/東京駅丸の内口復原
  • 2やさしいことばはむずかしい
  • やさしいことばはむずかしい/「人事を尽くして天命を待つ」ふたたび/「文学」のおはなし/スルスミって何?
  • 3「空巣」「人脈」など
  • 「空巣」「人脈」など/日本新名詞/中国の西洋音訳語/中国地名カタカナ書き/俗語
  • 4中国の「ドーダ」
  • 中国の「ドーダ」――夏王朝・漢字・始皇帝/「国語」運動と文字改革/語と字と意味/中国の現行字
  • 5日本語と国語
  • 日本語と国語/吉田松陰書簡の近代語/『米欧回覧実記』/明治初めの訳語/鴎外の詩/明治の荻生徂徠
  • 6『かながきろんご』
  • 『かながきろんご』/「漢語」「外国」「外国語」/唐の手書き本/六世紀の略字/異体字の話
  • 7江戸のタバコ禁令
  • 江戸のタバコ禁令/名乗と通称/武士の絵日記/兵站、輜重/勅語、奉安殿、御真影/「統一」のはなし
  • あとがき

『ぼくの花森安治』二井康雄 (CCCメディアハウス/2016/8)を読む

 <暮らしの手帖>には若い頃から何かと関心があった。何冊かの保存版は今でも本棚の何処かに眠っている筈だ。

 それは日常的な生活に、庶民がどう暮らしを快適にできるだろうかという、この雑誌が追求した中心的課題よりも、垣間見える編集長の花森安治が、持つ人生観のようなものに惹かれたのかも知れない。この本はそれらを編集部にいた長い経験を経た著者が活き活きと語る。

 例えば、先の戦争中の自分の体験に対してして、花森はこう書いているという。

  <僕は確かに戦争犯罪をおかした。言訳をさせてもらうなら、当時は何も知らなかった、だまされた。しかしそんなことで免罪されるとは思わない。これからは絶対だまされない、だまされない人をふやしていく。その決意と使命感に免じて、過去の罪はせめて執行猶予してもらっている、と思っている。>

 これは東京帝大卒業後、大政翼賛会宣伝部に在籍して、当時の軍国主義的宣伝活動に積極的に参加していた時期を、振り返って語った自己批判だ。立派だと思う。

 一つの時代をつくり、作り続けようという出版活動の内面に迫る快著。

 

花森安治略年譜:p165~168 文献:p173
抄録    晩年の花森安治に、足かけ9年仕え、大橋鎭子には、亡くなる寸前までのほぼ40年仕えた筆者だからこそ分かる『暮しの手帖』が貫いた生活哲学と、世の中を見る目、まっとうな暮しのありようを、余すことなく説き明かす。
〈二井康雄〉1946年大阪生まれ。69年(株)暮しの手帖社に入社、編集部に所属。本誌の副編集長等を務め、2009年に定年退職。映画ジャーナリスト、書き文字ライター。